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SEMICON China 2026開幕——AI半導体と先端パッケージングが主役に

世界最大級の半導体展示会 SEMICON China 2026 が2026年3月25日、上海新国際博覧中心(SNIEC)で開幕した。3日間の会期中に1,100社以上が出展し、来場者数は10万人超を見込む。今年の中心テーマはAI半導体先端パッケージング技術だ。生成AIブームがデータセンター向け半導体需要を爆発的に押し上げる中、中国半導体産業は対中規制の逆風を受けながらも国産化を加速させている。CoWoS、HBM4、チップレットといったキーワードが飛び交う会場から、半導体産業の最前線を読み解く。

SEMICON China 2026 の概要

SEMICON は SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)が主催する国際半導体展示会で、北米・欧州・台湾・韓国・日本・中国で開催されている。中でも SEMICON China は中国市場の巨大さを反映し、出展社数・来場者数で最大級の規模を誇る。

2026年の開催概要は以下のとおりだ。

項目詳細
会期2026年3月25日〜27日
会場上海新国際博覧中心(SNIEC)
出展社数1,100社以上(前年比12%増)
予想来場者数10万人超
展示面積86,000平方メートル
主要テーマAI半導体、先端パッケージング、成熟ノード拡張
基調講演SMIC CEO、YMTC CEO、ASE Group CEO ほか

前年(2025年)と比べて出展社数は約12%増加しており、対中規制にもかかわらず中国半導体市場への関心が衰えていないことを示している。注目すべきは、日本の東京エレクトロンオランダのASML米国のApplied Materials といった装置大手が引き続き出展していることだ。彼らにとって中国は依然として世界最大の半導体装置市場であり、規制対象外の成熟プロセス向け装置の販売は継続している。

AI半導体——需要爆発の核心

データセンターAI投資の加速

2026年の世界データセンター向けAI半導体市場は約1,200億ドル(約18兆円) に達すると予測されている(TrendForce推計)。前年比約40%の成長で、この爆発的な需要増が半導体産業全体を牽引している。

需要の中心にあるのは GPU/AIアクセラレータ だ。Nvidia の H200、B200(Blackwell)、そして2026年後半に出荷開始予定の Vera Rubin(次世代プラットフォーム)が市場を支配している。AMD の MI400X、Intel の Falcon Shores、Google の TPU v6 といった競合製品も登場しているが、Nvidia のシェアは依然として約**80%**を占める。

中国勢のAI半導体開発

対中規制により Nvidia の最先端GPUが中国に輸出できない状況下で、中国企業は独自のAI半導体開発を加速させている。

Huawei HiSiliconAscend 910C は、7nmプロセスで製造されるAIトレーニング用チップだ。性能はNvidia A100と同等クラスとされるが、H100/H200には及ばない。しかし、中国国内のクラウド事業者(Alibaba Cloud、Baidu、Tencent Cloud)が大量採用しており、国内市場では事実上の標準となりつつある。

Biren TechnologyBR200 は、Nvidia H100対抗を謳う高性能GPUだ。ただし、先端プロセスへのアクセスが制限されているため、チップ単体の性能ではNvidia勢に劣る。このギャップを埋めるために、中国企業はソフトウェア最適化とシステムレベルの工夫で対抗している。

SEMICON China 2026では、これら中国製AIチップのデモンストレーションが複数のブースで行われており、「規制があっても開発は止まらない」というメッセージが会場全体に漂っている。

企業チップ用途プロセスNvidia相当量産状況
NvidiaH200AI訓練/推論4nm (TSMC)量産中
NvidiaB200 (Blackwell)AI訓練3nm (TSMC)量産中
AMDMI400XAI訓練/推論3nm (TSMC)H200対抗2026年中
HuaweiAscend 910CAI訓練7nm (SMIC)A100相当量産中
BirenBR200AI訓練7nmH100対抗少量生産
CambriconMLU590AI推論7nmA100対抗量産中

先端パッケージング——半導体の新たなボトルネック

なぜパッケージングが注目されるのか

半導体産業はこれまで、ムーアの法則に従ってトランジスタの微細化を進めることで性能を向上させてきた。しかし、プロセスノードが3nm、2nmと微細化の限界に近づく中、チップ単体の微細化だけでは性能向上が頭打ちになりつつある。

そこで注目されているのが 先端パッケージング技術 だ。複数のチップ(チップレット)を高密度に接続し、あたかも1つの巨大チップのように動作させることで、微細化に頼らずに性能を向上させる。AI半導体のようにメモリ帯域幅がボトルネックとなる用途では、パッケージング技術が製品の競争力を直接左右する。

以下の図は、先端パッケージング技術の進化ロードマップと主要プレイヤーを示しています。

先端パッケージング技術の進化ロードマップ(2D → 2.5D CoWoS → 3D SoIC/HBM4 への進化と各社技術)

CoWoS——AI半導体の心臓部

CoWoS(Chip on Wafer on Substrate) はTSMCが開発した2.5D/3Dパッケージング技術で、AI半導体の事実上の標準となっている。シリコンインターポーザと呼ばれる中間基板の上に、ロジックチップ(GPU/CPU)とHBM(High Bandwidth Memory)を横並びに搭載し、超高帯域の接続を実現する。

Nvidia のH200はCoWoS-S(Sタイプ)を、B200はCoWoS-L(大型基板対応Lタイプ)を採用している。次世代のVera Rubinでは、さらに大型のCoWoS基板に最大12スタックのHBMを搭載する見込みだ。

CoWoSの問題は供給不足にある。TSMCはCoWoSの生産能力を2025年に前年比2倍、2026年にさらに1.5倍に拡張する計画だが、それでもNvidia、AMD、Google、Amazonからの需要に追いつかない。SEMICON China 2026では、CoWoS供給のボトルネック解消を議論するパネルセッションが満席となった。

HBM4——次世代メモリの競争

HBM(High Bandwidth Memory) はDRAMチップを垂直に積層し、超高帯域のメモリアクセスを実現する技術だ。AI訓練では大量のデータを高速にGPUに供給する必要があり、HBMがなければ最先端のAIチップも真価を発揮できない。

2026年現在のHBM市場は以下の構造だ。

世代帯域幅容量/スタック主要サプライヤー用途
HBM3819 GB/s24GBSK Hynix, Samsung, MicronH100, MI300X
HBM3E1.18 TB/s36GBSK Hynix, Samsung, MicronH200, B200
HBM42+ TB/s48GB+SK Hynix(2026年量産), SamsungVera Rubin, MI500X
HBM4E3+ TB/s64GB+開発中次々世代(2028年〜)

HBM市場では SK Hynix が約50%のシェア を握り、Samsung(約35%)、Micron(約15%)が追う構図だ。SK Hynix は2026年後半にHBM4の量産を開始する計画で、Nvidia のVera Rubin向けの独占的な供給契約を持つとされる。

SEMICON China 2026では、中国企業によるHBM国産化の取り組みも展示された。CXMT(ChangXin Memory Technologies) がHBM2E相当の製品を開発中と発表したが、HBM3/HBM4レベルの製品化には3〜5年の遅れがあると見られている。

チップレット——「レゴブロック」型の半導体設計

チップレット(小片チップ) は、1つのモノリシック(一体型)チップを機能ごとに分割し、パッケージング技術で再統合するアプローチだ。CPU、GPU、メモリコントローラ、I/Oインターフェースなどを個別のチップレットとして製造し、最適なプロセスノードで製造した上でパッケージ上で接続する。

AMDが Ryzen/EPYC プロセッサで先駆的に採用し、IntelもFoverosパッケージングでチップレット戦略を推進している。中国の半導体企業にとって、チップレットは先端プロセスへのアクセス制限を回避する手段としても注目されている。各チップレットを成熟プロセス(28nm、14nm等)で製造し、パッケージング技術で高性能を実現すれば、最先端のEUVリソグラフィ装置がなくても競争力のある製品を作れる可能性がある。

中国半導体産業の国産化加速

巨額投資の継続

中国政府は半導体産業の自給率向上を国家戦略として推進している。2024年に設立された国家集積回路産業投資基金(通称: ビッグファンド)第3期3,440億元(約7.2兆円) という過去最大の規模で、中国半導体エコシステム全体への投資を加速させている。

以下の図は、中国半導体市場の規模推移と国産比率の変化を示しています。

中国半導体市場の規模推移と国産比率の推移グラフ(2020〜2027年予測)

中国の半導体自給率は2020年の約16%から2026年には約26%に上昇する見込みだが、これは主に成熟ノード(28nm以上)での国産化によるものだ。先端ロジック(7nm以下)の自給率は依然として低く、Huawei向けにSMICが量産する7nmプロセスが実質的な上限となっている。

SMIC の動向

SMIC(中芯国際集成電路製造) は中国最大のファウンドリ(受託製造)企業だ。2026年の売上高は約100億ドル(約1.5兆円) と推定され、世界ファウンドリランキングでは第4位に位置する(TSMC、Samsung、GlobalFoundriesに次ぐ)。

SMICの最先端プロセスは7nm相当(N+2) で、EUV装置なしにDUV(深紫外線)リソグラフィの多重露光で実現している。歩留まり(良品率)はTSMCの7nmと比べて低いとされるが、Huawei Ascend 910C や Kirin 9100S(スマートフォン向けSoC)の量産を支えている。

SEMICON China 2026でSMICのCEOは基調講演で、「成熟ノードの生産能力拡大」と「パッケージング技術への投資強化」を重点戦略として掲げた。先端プロセスの微細化競争ではなく、成熟プロセスの大量供給と先端パッケージングの組み合わせで差別化を図る方針だ。

Huawei HiSilicon の復活

Huaweiの半導体子会社 HiSilicon は、米国の制裁により一時的にチップ設計能力を大幅に制限されたが、2023年のMate 60 Pro(SMIC製7nmチップ搭載)のサプライズ発売以降、着実に復活を遂げている。

2026年現在、HiSiliconは以下の製品ラインナップを展開している。

製品用途プロセス製造備考
Ascend 910CAI訓練7nmSMIC中国クラウド大手が採用
Kirin 9100Sスマートフォン7nmSMICMate 70 シリーズ搭載
Kunpeng 930サーバーCPU7nmSMICArmベース
Ascend 310PAI推論(エッジ)14nmSMICIoT・監視カメラ向け

HiSiliconの復活は、中国半導体の国産化が「実験段階」から「商用展開段階」に移行していることを象徴している。

日米欧の対中半導体規制——最新状況

米国:規制の段階的強化

米商務省は2022年10月の初回規制以降、段階的に対中半導体規制を強化してきた。2026年3月時点の主要規制は以下のとおりだ。

規制カテゴリ対象効果
先端GPU輸出規制Nvidia H100/H200/B200等中国のAI訓練能力を制限
EUV装置輸出規制ASML EUVリソグラフィ装置5nm以下の最先端プロセスを阻止
先端DUV装置規制一部のArFイマージョン装置7nm量産を困難にする狙い
HBM輸出規制HBM3/HBM3E/HBM4AI半導体のメモリ帯域を制限
人材規制米国人の中国半導体企業支援技術移転を阻止

オランダ・日本:装置規制への参加

オランダ政府は2023年6月に半導体装置の輸出規制を導入し、ASMLの先端DUV装置(TWINSCAN NXE:3400C等)の中国向け輸出を制限した。2025年にはさらに規制を強化し、一部の成熟プロセス向け装置も対象に加えた。

日本政府も2023年7月に23品目の半導体製造装置を輸出管理の対象に追加した。東京エレクトロンSCREENニコン といった日本の装置メーカーは中国売上比率が高く(東京エレクトロンは約40%)、規制の影響は大きい。しかし、規制対象は先端プロセス向けの装置に限定されており、成熟ノード向けの装置販売は継続している。

規制の「抜け穴」と実効性

規制にもかかわらず、中国半導体産業は一定の成長を維持している。その理由は複数ある。

成熟ノードの急成長: 対中規制は主に先端プロセスを対象としているため、28nm以上の成熟ノードでの生産拡大は阻害されていない。中国は2026年末までに成熟ノードの月間ウェハ生産能力を**世界全体の約35%**にまで引き上げる見込みだ。

DUV多重露光の進化: SMICがEUVなしに7nmプロセスを実現した「DUV多重露光」技術は、コストと歩留まりの面で非効率だが、「できないことはない」ことを証明した。5nmプロセスへの挑戦も報じられているが、実用的な歩留まりの達成は困難とみられている。

装備の在庫確保: 規制発動前に中国企業が大量の装置を在庫として確保しており、当面の生産拡大には支障がないとされる。ただし、装置の保守・メンテナンスが制限される中、長期的には稼働率の低下が懸念されている。

日本の半導体産業への影響

TSMC熊本工場とRapidus

日本の半導体復権に向けた2大プロジェクトが進行中だ。

TSMC熊本工場(JASM) は第1工場が2024年末に量産を開始し、2026年は月間5.5万枚の生産能力でフル稼働している。22/28nmと12/16nmプロセスを提供し、ソニーやデンソーなど日本企業向けのチップを製造する。第2工場は2027年稼働予定で、6/7nmプロセスに対応する。

Rapidus は2nm以下の最先端ロジック半導体の量産を目指す日本企業で、IBMの技術ライセンスを受けて北海道千歳市に工場を建設中だ。2027年の試作開始を目指しているが、技術的・資金的な課題は大きい。2026年3月時点で政府から9,200億円の補助金が決定しているが、量産に必要な総投資額は5兆円規模とされ、追加の資金調達が不可欠だ。

日本の装置・材料メーカーの戦略

日本は半導体製造装置と材料分野で世界的な強みを持つ。対中規制は売上減のリスクをもたらす一方、中国以外の市場(TSMC台湾・米国工場、Samsung韓国、Intel米国)での需要拡大という恩恵もある。

企業分野世界シェア中国売上比率SEMICON China出展
東京エレクトロンエッチング・成膜装置約25%約40%出展
SCREEN洗浄装置約60%約30%出展
ディスコダイシング・研削約80%約25%出展
レーザーテックマスク検査装置約100%出展
信越化学シリコンウェハ約30%約20%出展
JSRフォトレジスト約30%約15%出展

SEMICON China 2026では、日本の装置メーカーは成熟プロセス向けの製品を中心に展示し、先端プロセス向け装置の展示は控えめだった。対中規制の枠内でビジネスを継続しつつ、中国市場での存在感を維持するバランス戦略が見て取れる。

パッケージング分野での日本の強み

先端パッケージングの重要性が増す中、日本企業には大きな商機がある。

イビデン新光電気工業 は、IC基板(パッケージ基板)の世界大手で、CoWoS用の高密度基板を供給している。AI半導体向けのFC-BGA基板の需要急増により、両社の受注は大幅に増加している。

レゾナック(旧 昭和電工マテリアルズ) は、半導体封止材やダイボンドフィルムなどのパッケージング材料で世界トップシェアを持つ。HBMの積層に使用するNCF(Non-Conductive Film)の需要が急増している。

先端パッケージングは、前工程(ウェハ製造)ほど厳しい輸出規制の対象になっていないため、日本企業にとっては中国市場を含むグローバルな成長機会となっている。

半導体産業の今後——3つの構造変化

1. 前工程から後工程へのパラダイムシフト

半導体産業の競争の焦点が、微細化(前工程)からパッケージング(後工程)へ移行している。TSMC自身が「後工程の技術革新が前工程と同等の重要性を持つ」と公言しており、後工程への投資額は前年比50%以上増加している。

2. 地政学による供給網の再編

米中対立を軸に、半導体サプライチェーンの「デカップリング(分断)」が加速している。TSMCの米国・日本・ドイツ工場建設、Samsungのテキサス工場拡張、Intelの米国・アイルランド・イスラエル工場への投資など、「フレンドショアリング(友好国間での供給網構築)」が進む。一方で、中国は成熟ノードの大量生産で「量の力」による対抗を試みている。

3. AI需要の構造的成長

生成AIのデータセンター需要は一過性のブームではなく、構造的な成長サイクルだ。企業のAI投資は2026年に6,500億ドル(約97.5兆円) 規模に達し、2030年まで年率20%以上の成長が続く見通しだ。この需要がCoWoS、HBM、先端パッケージングの供給不足を長期化させ、半導体産業全体の設備投資サイクルを駆動する。

まとめ——SEMICON China 2026が映す半導体の未来

SEMICON China 2026は、半導体産業が3つの転換点に立っていることを明示した。第一に、AI半導体需要の爆発が産業全体の成長エンジンとなっている。第二に、先端パッケージングが微細化に代わる性能向上の主軸となりつつある。第三に、対中規制の中でも中国半導体産業は成熟ノードとパッケージング技術を軸に独自の成長路線を歩んでいる。

日本にとって、この展示会のメッセージは明確だ。装置・材料分野の既存の強みを活かしつつ、先端パッケージング分野での競争力を高めること。TSMC熊本工場やRapidusを核とした半導体エコシステムの再構築を加速すること。そして、対中規制の枠組みの中でビジネス機会を最大化する戦略的バランスを取ることが求められている。

アクションステップ

  1. 半導体業界関係者向け: TSMC CoWoSの供給動向とHBM4の量産スケジュールを継続ウォッチし、自社製品のパッケージング技術ロードマップへの影響を評価する。特にイビデン・新光電気のIC基板やレゾナックの封止材の供給状況は、製品の量産計画に直結する
  2. 投資家向け: 日本の半導体装置・材料メーカー(東京エレクトロン・SCREEN・ディスコ・レーザーテック・信越化学)の中国売上比率の推移と、パッケージング関連の受注動向を四半期決算で確認する。先端パッケージング関連銘柄(イビデン・新光電気・レゾナック)は中長期の成長テーマとして有望
  3. テックエンジニア向け: チップレットアーキテクチャとUCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)規格の技術動向を把握し、モジュラー型半導体設計のスキルセットを獲得する。AMD、Intel が推進するチップレット・エコシステムは、今後のSoC設計の標準手法になる可能性が高い

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