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Figure 03がBMW工場でX3を3万台生産——商用ヒューマノイド量産時代へ

2026年5月、米Figure AIは、自社のヒューマノイドロボット Figure 02 がBMWのサウスカロライナ州 Spartanburg工場 で稼働を開始してから約11ヶ月が経過し、BMW X3を累計3万台超の生産に貢献した と公式に発表した。累計稼働時間は 約1,250時間 に達し、商用ヒューマノイドが自動車製造ラインに本格的に組み込まれた最初の大規模事例となった。

Figure AIはこの実績をベースに、後継機 Figure 03 をBMWドイツ国内工場(Dingolfing / Munich)へ2026年2月から順次展開しており、いよいよ「ヒューマノイドが工場で本物の車を作る時代」が現実の量産フェーズに突入した。

本記事では、(1) BMW Spartanburgパイロットで実際に何が起きていたのか、(2) Figure 03がFigure 02から何を継承し何を進化させたのか、(3) Tesla Optimus / Agility Digit / Apptronik Apolloとの徹底比較、そして(4) トヨタ・ホンダ・川崎重工・ファナックなど日本勢にとっての意味、を多角的に分析する。

何が起きたか——BMW Spartanburgパイロットの全容

公開された情報をFigure AI公式リリース、BMW Group発表、The Information、Reutersから総合すると、パイロットの主要事実は以下の通りである。

項目内容
稼働開始2025年6月(Figure 02を導入)
稼働場所BMW Spartanburg工場(米サウスカロライナ州)
担当工程X3のシートメタル組立、シャシー部品ハンドリング
累計稼働時間約1,250時間(2026年5月時点)
生産寄与BMW X3 30,000台超
ロボット台数公表されていないが「複数台」(推定3〜6台)
後続展開2026年2月からBMWドイツ工場(Dingolfing / Munich)でも稼働開始
次世代機投入Figure 03、2026年Q3以降に順次切り替え
累計投資Figure AIへBMW・Microsoft・NVIDIA・OpenAIなどが合計$1.5B超を投資

最大のポイントは、「実証実験」ではなく「実際にX3が3万台売られるラインに組み込まれていた」 という点である。これまでのヒューマノイドの工場導入はほぼ全てが「数日〜数週間のデモ」「無人ラインでの実験」だった。Figure 02はSpartanburg工場の実ラインで、人間の作業員と物理的に近い位置で、X3の組立に関与していた。これはヒューマノイド業界にとって史上初の出来事と言ってよい。

図1: Figure 02のBMW Spartanburgパイロットにおける稼働時間推移とX3生産台数を示す棒グラフ。2025年Q3から2026年Q2にかけて段階的に稼働時間が伸び、累計1250時間で3万台生産に寄与

上の図は、Figure 02のBMW Spartanburgでの累計稼働時間推移を示している。2025年6月の導入時は数台が1日数時間の検証稼働だったが、2026年Q1からは複数台がほぼフルシフトで稼働する体制に移行した。Q2末(2026年5月)時点で累計1,250時間に達し、これはヒューマノイドが商用ラインで稼働した時間として世界最長記録である。

担当工程:シートメタル組立と「人間の隣で働く」設計

Figure 02がBMW工場で実際に担当している工程は、主に以下の2種類だ。

  1. シートメタル(鋼板)ハンドリング:X3のドアフレームやサイドパネルの素材を、ロボットアームから組立治具へ運搬・位置決めする。重量は数キロ〜20キロ程度。
  2. シャシー部品の組付け補助:ボディシェルへの部品取り付け前の準備作業(部品を所定の位置に置く、向きを揃える、人間の作業員へ手渡す)。

注目すべきは、これらの作業がいずれも 「人間の作業員と物理的空間を共有する」 形で行われている点である。従来の産業用ロボット(ファナック、ABB、安川電機)は安全柵に囲まれた専用エリア内で動作するのが基本だが、Figure 02は 協働ロボット(コボット)相当の安全認証 を取得した上で、人間と数メートル以内の距離で稼働している。

これは「人間の作業員を即座に置き換える」ためではなく、「既存の人間用ラインに後から追加投入できる」 ことを意味する。新工場を建てる必要も、ラインを全面的に再設計する必要もない。これがヒューマノイド形状を選んだ最大の合理性であり、Figure AIのCEOブレット・アドコック氏が一貫して主張してきた「人間用に最適化された世界をそのまま使える」というビジョンが、Spartanburgで実証されたわけだ。

Figure 03とは何か——Figure 02からの進化ポイント

Figure 03は2025年10月に発表され、2026年初頭から本格出荷が始まったFigure AIの第3世代ヒューマノイドである。Figure 02から何が変わったのか、技術的な進化を整理する。

1. Helix VLA(Vision-Language-Action)モデルの全面採用

Figure 03の最大の進化は、自社開発のエンドツーエンドAIモデル Helix をフル搭載した点である。Helixは、カメラからの画像入力(Vision)と自然言語の指示(Language)を、ロボットの関節制御信号(Action)へ直接マッピングする統合モデルだ。これはGoogle DeepMindの RT-2、Physical Intelligenceの π0 と同じVLAアーキテクチャを採用しており、従来のロボット制御で必要だった「タスクごとの個別プログラミング」を不要にする。

Figure 02では一部の作業がスクリプトベースで動いていたが、Figure 03では「このパネルを取って、ここに置いて」という自然言語に近い指示だけで作業が遂行できる。これにより、新しい工程の導入時間が 数週間→数時間 に短縮されている。

2. ハードウェアの全面再設計

Figure 03は、Figure 02と比べて以下の点で進化した。

項目Figure 02Figure 03
重量約70kg約60kg(-14%)
可搬重量20kg25kg(+25%)
連続稼働時間3〜4時間5時間(バッテリー大型化)
カメラ6基全身に分散配置(手のひら含む)
触覚センサ指先のみ手のひら・指先全体
製造原価推定$50K推定$25K以下(量産時)

特に重要なのは 製造原価の劇的な低下 である。Figure AIは2025年に自社製造拠点 BotQ をカリフォルニア州サンノゼに開設し、Figure 03から自社内製化率を大幅に高めた。これにより、原価を約半分に圧縮することに成功している。

3. BotQ工場——年産1.2万台体制

Figure AIは2025年Q4に量産工場「BotQ」の稼働を開始し、年産1.2万台規模 の体制を構築中だ。これは現時点で世界最大のヒューマノイド量産工場である。

CEOアドコック氏によれば、Figure AIの中期目標は 「4年間で累計10万台のFigure 03を出荷する」 こと。これは1990年代のPC普及期と同じ規模感での導入を目指していることを意味する。

図2: Figure 03 / Tesla Optimus / Agility Digit / Apptronik Apolloの4社比較表。商用実績、サイズ、可搬重量、連続稼働時間、AI基盤、想定価格を一覧で比較

上の図は、商用ヒューマノイドの主要4機種を比較した表である。次節で各機種の戦略を詳しく見ていく。

競合4社比較——Figure / Tesla / Agility / Apptronik

ヒューマノイド領域は2024〜2026年にかけて急速にプレイヤーが増えたが、「実際に商用工場で稼働している」と言える企業はわずか4社に絞られる。それぞれの戦略を整理する。

Figure AI(米国)

  • 強み:BMWとの実績、Helix VLAによるエンドツーエンドAI、BotQ自社工場
  • 弱み:未だ自動車工場以外(一般倉庫・小売)での実績は乏しい
  • 戦略:自動車製造の垂直深掘り→年内に第2のOEM(噂ではVolkswagenまたはStellantis)との契約発表予定
  • 想定単価:$30,000(4年以内に$20,000を切る目標)

Tesla Optimus(米国)

  • 強み:イーロン・マスクの注目度、FSD(自動運転AI)からの技術流用、Tesla自社工場での内製
  • 弱み:外部企業への商用導入実績がゼロ、デモ動画とリーク以外の情報が極端に少ない
  • 戦略:まずはTesla自社工場(Fremont / Giga Texas)でOptimusに車両を作らせる、その後で外販
  • 想定単価:マスク氏は「最終的に$20,000-30,000」と公言しているが、実勢価格は未公開

Optimus Gen 3は2025年末にイーロン・マスク氏がTwitter(X)で「2026年に数千台出荷」と発言したが、現時点でTesla社外の工場で稼働している公式事例は確認されていない。

Agility Digit(米国)

  • 強み:Amazonとの提携実績(実際にAmazonの倉庫で稼働中)、ロジスティクス特化、人型を捨てた独自フォルム(脚が後ろ向きに曲がる)で長時間稼働を実現
  • 弱み:自動車製造領域での実績はない、物流タスクに最適化されすぎている
  • 戦略:RaaS(Robot-as-a-Service)モデルで月額課金、ハードウェア販売には踏み込まない
  • 想定単価:月額$5,000〜$10,000(RaaS)

Apptronik Apollo(米国)

  • 強み:Mercedes-Benzとの提携、Apple(噂レベルだが$1B超の出資検討報道)との連携可能性、Google DeepMindとのAI協業
  • 弱み:Figure AIに比べて商用台数で大きく後れを取る、量産工場の整備が遅れている
  • 戦略:自動車(Mercedes)と物流(GXOロジスティクス)の二正面作戦
  • 想定単価:$50,000+(量産が立ち上がれば$30,000レベルへ)

4社の本質的な違い

上記4社を整理すると、戦略の軸は2つに分かれる。

  1. 垂直特化型(Figure / Apptronik):特定OEM(BMW / Mercedes)と深く組み、自動車製造の現場で実績を積み上げる
  2. 水平展開型(Tesla / Agility):自社内またはAmazonのような巨大物流オペレーターと組み、規模で量産コストを下げる

Figure AIの強みは、BMWという「実車を売っている自動車メーカー」と組んで実生産に組み込まれた点 にある。Tesla Optimusは自社工場で稼働できても、Tesla車の生産プロセスに本当に組み込まれているかは外部からは検証できない。一方、BMW X3はディーラーで売られている実車であり、その生産にFigure 02が関与した事実は否定しようがない。

実際に「Figure 03導入はどう動くか」——筆者の所感

筆者は実際にFigure 03を購入・稼働させることはできない(個人購入不可、企業向け契約のみ)。そのため、ここでは技術的・経済的な視点から、Figure 03導入の現実性を考察したい。

TCOで見ると本当に元が取れるのか

Figure 03の想定単価$30,000は、一見すると安く見える。だが、ヒューマノイド導入の真のコストは「本体価格」ではなく TCO(Total Cost of Ownership) で考える必要がある。

コスト項目推定金額備考
本体価格$30,000Figure 03 1台
5年間の保守契約$15,000推定(年$3,000)
充電・電気代$2,0005年合計
工場側の安全認証対応$20,0001台あたり配賦
AI更新・モデル運用費$10,0005年合計
5年TCO合計$77,000約1,200万円($1=155円)

5年間のTCOは約1,200万円。これを米国製造業の平均人件費(年$60,000、5年で$300,000)と比較すると、4倍近く安い ことになる。さらにFigure 03は24時間稼働可能(人間は8時間シフト)なので、生産能力ベースで考えれば実質コストはさらに下がる。

ただし、これは「人間の作業員を完全に置き換える」前提での計算だ。実際には、Figure 03は「人間と協働する」設計のため、完全置換ではなく 「夜勤・休日シフトの代替」「危険工程の代替」「人手不足の補完」 という使い方が主流になると見ている。

日本企業がFigure 03を導入する場合の現実

日本企業が今すぐFigure 03を導入するのは現実的にはハードルが高い。理由は4つある。

  1. 日本リージョンのサポート体制が未整備:Figure AIの東京拠点は未開設。保守は当面USから対応する形になる
  2. 電源仕様の違い:日本の100V/200V電源環境とFigure 03(120V/240V想定)の整合性確認が必要
  3. 労働安全衛生法との適合:日本国内でヒューマノイドを工場で動かす際、産業安全衛生法の適用判断がまだ確立されていない
  4. AIモデルの日本語対応:Helix VLAは英語ベース。日本語の音声指示や日本語マニュアル対応は今後の課題

したがって、日本のメーカーがFigure 03を導入するなら、早くても2027〜2028年、最初は実験ラインから始まると見るのが妥当だ。

日本での影響——トヨタ、ホンダ、川崎重工、ファナック

Figure 03の本格量産は、日本の自動車・ロボット産業に対して直接的な衝撃を与える。各社別に影響を分析する。

トヨタ:「TRI+自社開発」のハイブリッド戦略

トヨタは2024年からトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)でヒューマノイド向けLBM(Large Behavior Model)の研究を続けており、2025年にはBoston Dynamicsとの戦略パートナーシップも発表した。Boston DynamicsはHyundaiグループ傘下だが、トヨタはAIモデル供給側として連携している。

しかし、トヨタ自身がヒューマノイドを量産する計画はまだ公式には出ていない。代わりに、トヨタは協働ロボット(コボット)の社内開発を強化しており、ヒューマノイドはあくまで「外部から導入する選択肢の1つ」という位置づけだ。Figure 03がBMW Spartanburgで成功した今、トヨタが2026〜2027年にFigure AIまたはAgility Roboticsとの試験契約に踏み切る可能性は十分にある。

ホンダ:ASIMOの遺産をどう活かすか

ホンダは2000年に世界を驚かせた ASIMO の開発を2018年に中止して以来、ヒューマノイド領域からは表向き撤退している。だが、ASIMOで蓄積された二足歩行制御技術と、ホンダの主力事業である 次世代モビリティ(eVTOL、ロボティクス) への投資は継続している。

Figure 03の量産化を受けて、ホンダが再びヒューマノイド領域に参入する可能性は十分にあると見る。具体的には、ASIMOの後継プロジェクトとして、工場・物流向けヒューマノイドの自社開発を再起動する シナリオが考えられる。ホンダの強みは「人型ロボットを動かす歴史的知見」と「グローバル生産網(39の生産拠点)」であり、両方を活用すればFigure AI・Apptronikと正面から競合できるポテンシャルがある。

川崎重工:Kawasaki Robotics × Kaleido

川崎重工は2017年から自社開発のヒューマノイド Kaleido を発表しており、人命救助や災害対応向けに展開してきた。Kaleidoは身長178cm・体重85kgと大型で、産業向け作業よりも「人間が立ち入れない過酷環境」向けの設計だ。

Figure 03の登場により、川崎重工がKaleidoを「産業向け」に再設計する圧力が一気に高まるだろう。川崎重工はKawasaki Robotics(産業用ロボット世界4位)の母体でもあり、自動車工場の顧客基盤を持っている。Figure AIに対抗できる国内勢として最も有力な候補と言える。

ファナック:「ロボットアームの王者」が直面する選択

ファナックは産業用ロボットアームで世界トップシェア(売上ベース約24%)を握る企業だが、ヒューマノイド領域では出遅れている。同社のCEO山口賢治氏は2025年のインタビューで「ヒューマノイドは2030年以降の話」と慎重姿勢を示していた。

しかしFigure 03の量産化は、その想定を覆す可能性がある。「アーム型ロボット+AGV(無人搬送車)の組み合わせ」と「ヒューマノイド1台」がコスト・柔軟性で逆転する瞬間 が、ファナックが想定するよりも早く来るかもしれない。ファナックは伝統的に「自社内製」を貫いてきた企業だが、Figure AIまたはApptronikとの提携・出資を検討する可能性は十分にある。

図3: Figure 02パイロットからFigure 03本格量産までの3フェーズロードマップ。Phase 1(BMW Spartanburg検証)、Phase 2(BMWドイツ工場展開)、Phase 3(BotQでの年産1.2万台量産)の時系列フロー

上の図は、Figure 02のパイロットからFigure 03の本格量産までの3フェーズを示すロードマップである。Phase 3(2026年下期以降)で年産1.2万台体制が確立されれば、ヒューマノイドは「特殊な実証実験ロボット」から「普通に買える産業機械」へと姿を変える。

競合との比較表(再掲・詳細版)

項目Figure 03Tesla Optimus Gen3Agility Digit V4Apptronik Apollo
開発元Figure AI(米)Tesla(米)Agility Robotics(米)Apptronik(米)
商用実績BMW X3 3万台生産Tesla社内のみAmazon倉庫稼働中Mercedes試験稼働
身長168cm173cm175cm170cm
重量60kg57kg65kg73kg
可搬重量25kg20kg16kg25kg
連続稼働時間5時間非公開16時間4時間
AI基盤Helix VLA(自社)FSD流用独自LLMApple LLM/Google DeepMind
量産工場BotQ(年産1.2万台)Giga TexasSalem RoboFabTexas工場
想定単価$30,000$20-30K目標RaaS月額制$50,000+
主要投資家Microsoft / NVIDIA / OpenAI / BMWTesla(自社)DCVC / Playground Global / AmazonGoogle / Mercedes / Apple(噂)
累計調達額$1.5B超自社開発$400M超$700M超

この表から読み取れる重要なポイントは3つだ。

  1. Figure 03は商用実績で他を圧倒している:X3 3万台という具体的な数字を出せるのはFigure AIだけ
  2. Agility Digitは「人型を捨てた」のが強み:脚が後ろ向きに曲がる独自フォルムで長時間稼働を実現し、Amazonでの実用稼働が進んでいる
  3. Tesla Optimusは「未知数」:マスク氏のカリスマで注目を集めるが、実用稼働の実績は未公表

筆者の見解・予測——「ヒューマノイドのiPhone瞬間」はいつ来るか

最後に、筆者の中期予測を提示したい。

予測1:2027年までに「年産10万台」が見えてくる

Figure AIの目標である「4年で累計10万台」が達成可能かは、BotQ工場の歩留まりにかかっている。歩留まりが70%程度まで上がれば、2027年中に年産5万台、2028年に年産10万台が現実的な数字になる。これはちょうど Tesla Model 3の初期量産フェーズ(2017〜2018年)と同じスピード感 だ。

予測2:「単価$20,000」を切るのが業界の転換点

ヒューマノイドが本当に普及するのは、単価が$20,000を切った瞬間 だと見ている。$20,000=約310万円であれば、日本の中小製造業でも「設備投資の選択肢の1つ」として現実的になる。Figure AIは2028年までにこの価格帯に到達する計画を非公式に示しており、これが実現すれば日本の中小工場へも一気に普及が始まる。

予測3:「自動車工場の次は物流」が主戦場

Figure 03は自動車工場で成功したが、次の主戦場は 物流倉庫 になる。Amazon・Walmart・DHLなど、巨大物流オペレーターは人手不足が深刻で、ヒューマノイド導入の経済合理性が最も高い領域だ。Agility Digitが既にAmazonで先行している領域だが、Figure 03の汎用性の高さは物流でも武器になる。

予測4:日本勢の「再起動」は2027年が分水嶺

日本のロボットメーカー(ファナック、安川電機、川崎重工、デンソー、不二越)は、現状ヒューマノイド領域では完全に出遅れている。しかし、産業用ロボット技術の蓄積、自動車OEMとの密接な関係、そして日本固有の「人手不足の深刻さ」を考えれば、2027年までに日本勢の少なくとも1社がヒューマノイド領域に本格参入する と予測する。最有力候補は、Kaleidoを持つ川崎重工と、ASIMOの遺産を持つホンダだ。

予測5:「ヒューマノイドのiPhone瞬間」は2029〜2030年

最後に、ヒューマノイドが本当に「普通の存在」になる瞬間(=iPhone瞬間)は、2029〜2030年 と予測する。それまでに必要な条件は以下の通り。

  1. 単価$15,000以下
  2. 連続稼働10時間以上
  3. 自然言語での指示が完全動作(多言語対応)
  4. メーカーの保守ネットワークが世界100都市以上に展開
  5. 主要保険会社が「ヒューマノイド導入企業向け労災保険」を商品化

これらの条件が揃った瞬間、ヒューマノイドは「特殊な産業機械」から「あって当たり前のオフィス・工場の常駐スタッフ」へと姿を変える。それはFigure 03のBMW Spartanburg実績が証明した「実用フェーズの幕開け」から、わずか4〜5年後の話だ。

まとめ——次に取るべきアクション

Figure 03のBMW Spartanburg実績は、ヒューマノイドが「未来の技術」から「今日の現実」へと変わった瞬間だ。読者の立場別に、次に取るべきアクションを整理する。

製造業の経営者・工場長

  1. 2026年内に1度はFigure AIまたはApptronikとコンタクトを取る:実機を見学し、自社ラインへの適用可能性を検討する
  2. 2027年の試験導入を視野に予算枠を確保:1台あたり$50,000(TCO込み)程度の枠を中期予算に組み込む
  3. 既存の協働ロボット運用ノウハウを蓄積:ヒューマノイド導入時の最大の障壁は「人間と協働する運用設計」。先に協働ロボットで経験を積んでおくと移行が楽になる

スタートアップ・投資家

  1. ヒューマノイド向けソフトウェア領域に注目:ハードウェアはFigure / Tesla / Apptronikで寡占化されつつあるが、「ヒューマノイド用のタスク管理SaaS」「ヒューマノイド向け保険」「ヒューマノイドのフリート管理」など、周辺領域はまだ空白だ
  2. 日本のヒューマノイド関連スタートアップを発掘:Preferred Networks、Sakana AIなど、AI基盤を持つ企業がヒューマノイド領域に参入する可能性は高い
  3. 既存の協働ロボット企業の株価動向を観察:ファナック、安川電機、Universal Robots(Teradyne傘下)など、伝統企業がヒューマノイド対応で再評価される可能性がある

エンジニア・研究者

  1. VLA(Vision-Language-Action)モデルを学ぶ:Helix、RT-2、π0などのオープン実装に触れておくことで、ヒューマノイド時代の中核技術が理解できる
  2. ROS 2(Robot Operating System 2)の基礎を抑える:商用ヒューマノイドの多くはROS 2ベースで動いており、開発エコシステムへの参加障壁は低い
  3. 「ヒューマノイド × クラウド」の領域は伸びる:AWS RoboMakerやNVIDIA Isaac Simなど、ヒューマノイドのシミュレーション・運用基盤としてクラウドの需要は急増する。クラウド側のスキルセットも合わせて磨いておくと、キャリアの幅が広がる

ヒューマノイドの工場稼働は、もはやSFではない。BMW X3を3万台作ったFigure 02と、その後継Figure 03が、これから世界中の工場で「当たり前」になっていく。日本の製造業も、この波に乗るか、乗り遅れるかの選択を迫られている。

クラウドインフラとしてヒューマノイドのシミュレーション・運用を支える基盤に興味がある方は、AWS RoboMakerなどの活用も検討してほしい。

AWS

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