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BYD Song Ultra——9分で97%充電する「フラッシュ充電」EVが2万台超の予約

「充電に時間がかかるからEVは不便」——この常識を覆す1台が登場した。中国BYDが2026年3月26日に発売した新型SUV「Song Ultra」は、10%から70%までわずか5分、97%まで9分で充電が完了する「フラッシュ充電」技術を搭載している。価格は151,900〜179,900元(約310万〜370万円、$21,000〜$24,800)。発売からわずか20日間で21,586台の予約を記録し、中国EV市場に新たな衝撃を与えている。

Song Ultraの基本スペック

Song Ultraは、BYDの人気SUVライン「Song(宋)」シリーズの最上位モデルだ。コンパクトSUVセグメントに位置し、ファミリー向けの実用的なサイズ感と最先端の充電技術を両立させている。

項目Song Ultra
ボディタイプコンパクトSUV(5人乗り)
全長×全幅×全高4,710×1,880×1,670mm
ホイールベース2,770mm
バッテリー第2世代Blade Battery(LFP)
バッテリー容量72.8kWh
航続距離(CLTC)520km
最大充電出力1,500kW対応
10%→70%充電時間約5分
10%→97%充電時間約9分
モーター出力230kW(313PS)
0-100km/h加速5.9秒
駆動方式後輪駆動(AWDモデルは後日追加)
価格151,900〜179,900元(約310万〜370万円)

注目すべきは、この価格帯でフラッシュ充電対応を実現していることだ。テスラModel Yの中国での販売価格は約26万元(約530万円)であり、Song Ultraはそれより約40%安い。

フラッシュ充電技術の仕組み

Song Ultraの超高速充電を可能にしているのは、BYDが自社開発した3つの技術の組み合わせだ。

第2世代Blade Battery

BYDの代名詞であるBlade Battery(刀片電池)の第2世代モデルが搭載されている。LFP(リン酸鉄リチウム)セルを採用しながら、セル内部のイオン伝導パスを最適化することで、充放電時の内部抵抗を初代比60%削減した。これにより、大電流を受け入れても発熱が抑制され、バッテリー寿命への悪影響を最小化している。

BYDによると、フラッシュ充電を毎日繰り返しても、8年後のバッテリー容量維持率は85%以上を保証するという。LFP化学の本質的な安定性と、新設計の熱管理システムが組み合わさった結果だ。

1,500kW充電アーキテクチャ

Song Ultraの車両側充電システムは、最大1,500kWの電力を受け入れる設計だ。これは現行のテスラSupercharger V4(350kW)の約4倍に相当する。800Vの高電圧プラットフォームをベースに、液冷式充電ケーブルと車載充電回路の両方を刷新している。

ただし、1,500kWでの充電が可能なのはBYDの専用「フラッシュ充電ステーション」に限られる。一般的な公共充電器(50〜150kW)でも充電可能だが、その場合の充電速度は通常のEVと変わらない。

インテリジェント充電制御

車載AIが充電カーブをリアルタイムで最適化する。バッテリーの温度、劣化状態、外気温などをセンサーで常時モニタリングし、セルに負荷をかけすぎない最適な充電電流を自動で調整する。これにより、季節や使用条件を問わず安定したフラッシュ充電性能を発揮する。

以下の図は、Song Ultraのフラッシュ充電タイムラインを示しています。

BYD Song Ultraフラッシュ充電タイムライン。0分(10%)→5分(70%)→9分(97%)の充電過程、1,500kW充電出力、第2世代Blade Battery、20日間21,586台予約の情報をまとめて表示

この図のとおり、わずか5分で走行距離約350km分の電力を補充できるのは、ガソリン給油に匹敵するスピードだ。

他社EVとの充電速度比較

Song Ultraのフラッシュ充電は、現在市場にある主要EVと比較してどれほど革新的なのか。

車種10%→80%充電時間最大充電出力バッテリー化学価格帯
BYD Song Ultra約6分1,500kWLFP約310万〜370万円
Tesla Model 3 (V4)約15分350kWNMC約440万〜620万円
Porsche Taycan約18分270kWNMC約1,400万〜2,400万円
Hyundai IONIQ 6約18分350kWNMC約520万〜700万円
Mercedes EQS約31分200kWNMC約1,580万〜2,200万円
日産リーフ (40kWh)約40分50kWNMC約330万〜470万円
CATL×NIO (バッテリー交換)約3分N/A(交換式)LFP/NMC約500万〜900万円

以下の図は、主要EVの充電速度とBYDの充電インフラ設置計画を比較しています。

EV充電速度比較の棒グラフ。BYD Song Ultraの圧倒的な充電速度と、2026年末20,000基、2027年末50,000基のフラッシュ充電ステーション設置計画

この図が示すとおり、Song Ultraの充電速度は他社EVを大幅に引き離している。NIOのバッテリー交換(約3分)には及ばないが、充電インフラの設置コストがバッテリー交換ステーションの10分の1以下であるため、スケーラビリティではBYDに分がある。

フラッシュ充電ステーション展開計画

超高速充電を実現するには、車両側だけでなくインフラ側の対応が不可欠だ。BYDは独自の「フラッシュ充電ステーション」を中国全土に展開する大規模なインフラ計画を発表している。

展開スケジュール

  • 2026年3月時点: 約3,200基が主要都市(北京、上海、深圳、広州など)で稼働中
  • 2026年末目標: 20,000基(主要高速道路サービスエリアをカバー)
  • 2027年末目標: 50,000基(地方都市・観光地を含む全国カバー)

1基あたりの設備投資は約150万元(約3,000万円)と試算されている。BYDは2026年度だけで約300億元(約6,000億円)の充電インフラ投資を計画しており、これは同社の2025年度純利益(約400億元)の75%に相当する規模だ。

他メーカーとの互換性

BYDのフラッシュ充電ステーションはGB/T規格(中国の国家充電規格)に準拠しているため、BYD以外のEVでも利用可能だ。ただし、1,500kWでの充電に対応しているのは現時点ではSong UltraとBYDの一部新型車種に限られ、他社EVは通常出力(150〜350kW程度)での充電となる。

市場反応と予約状況

Song Ultraの市場反応は極めて好調だ。

  • 発売日(3月26日): 初日予約数 4,300台
  • 発売3日間: 累計8,700台
  • 発売10日間: 累計15,200台
  • 発売20日間: 累計21,586台

BYDの月間販売台数は2026年2月に約36万台だったが、Song Ultraだけで月間2万台ペースの需要があることになる。同社はSong Ultraの月産能力を4万台に設定しているが、予約状況を見る限り生産能力の引き上げが必要になる可能性がある。

購入者の分析によると、Song Ultraの購入者の約45%が「初めてのEV」で、充電時間への不安がEV購入を躊躇していた層が「フラッシュ充電」で踏み切ったケースが多いという。

日本ではどうなるか

BYDは2023年に日本市場に参入し、ATTO 3、Dolphin、Sealの3モデルを販売している。2026年3月時点で日本での累計販売台数は約12,000台にとどまっているが、Song Ultraの日本投入は市場を大きく動かす可能性がある。

日本投入の見通し

BYD Japanは2026年後半にSong Ultraの日本仕様を発表する計画を示唆している。日本仕様では右ハンドル対応、日本の充電規格(CHAdeMO / NACS)への対応、そして日本の安全基準への適合が必要になる。価格は400万〜500万円程度と予想されており、中国仕様より割高にはなるが、日産リーフe+やテスラModel Y(スタンダード)と直接競合するレンジだ。

充電インフラの課題

最大の課題は充電インフラだ。日本にはBYDのフラッシュ充電ステーションが存在せず、既存のCHAdeMO充電器の多くは50〜150kWにとどまる。NACSへの移行が進む中、1,500kW級の充電器が日本に設置されるのは2028年以降になる見通しだ。つまり、日本仕様のSong Ultraは当面、フラッシュ充電の真価を発揮できない可能性がある。

日本メーカーへの影響

トヨタ、日産、ホンダの日本3大メーカーは、いずれも超高速充電技術の開発を進めているが、量産車への搭載はまだ先だ。トヨタは2027年以降の次世代EVで全固体電池と超高速充電の組み合わせを計画しているが、BYDのフラッシュ充電は液体電解質のLFPバッテリーで実現しているため、コスト面で日本メーカーは苦戦する可能性がある。

消費者の選択肢拡大

日本のEV市場はテスラ、BYD、そしてヒョンデ(Hyundai)の輸入EVと、日本メーカーのEVが激しく競合する状況にある。Song Ultraの投入は、「安くて充電が速いEV」という新しいカテゴリを日本に創出し、従来のガソリン車ユーザーのEV乗り換えを加速させるだろう。

まとめ——充電革命がEV普及の最後のハードルを取り除く

BYD Song Ultraの「9分で97%」というフラッシュ充電は、EV普及における最大の障壁だった「充電時間」を事実上解消した。以下のアクションステップで、この技術革新に備えてほしい。

  1. EV購入検討中なら充電速度を最重視する: 次世代EVを購入する際は、最大充電出力と実際の充電カーブを必ず確認する。カタログスペックの「最大○kW」だけでなく、10%→80%の実測時間を比較すること
  2. 充電インフラの動向をウォッチする: BYDのフラッシュ充電ステーションが日本に来るかどうか、またNACS規格の普及状況を定期的にチェックする。自宅での普通充電と外出先での急速充電のバランスを考えた車種選びが重要だ
  3. バッテリー技術の進化を理解する: LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーは安価で長寿命、安全性が高い。NMC(ニッケルマンガンコバルト)に比べてエネルギー密度は劣るが、充電速度で優位に立つケースが増えている。バッテリー化学の違いを理解することで、より賢いEV選びができる
  4. 日本メーカーの全固体電池に注目する: トヨタが2027〜2028年に投入予定の全固体電池EVは、BYDのフラッシュ充電に対する日本勢の回答になる可能性がある。技術的な優位性と価格のバランスを見極めたい
  5. 中古EV市場の変化を意識する: フラッシュ充電対応EVの登場は、充電速度が遅い旧型EVの中古車価値を下げる可能性がある。現在EVを所有している人は、買い替えタイミングの検討を始めてもよいだろう

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