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BlueskyがClaude搭載アプリ「Attie」を発表——自然言語でフィードを自動生成

分散型SNS「Bluesky」が、AIを本格的に活用する新章に突入した——2026年3月28日、BlueskyはAtmosphereカンファレンスにおいて、AnthropicのClaude AIを搭載した新アプリ**「Attie」**を正式に発表しました。Attieは、ユーザーが自然言語で指示するだけでカスタムフィードを自動生成できるAIアシスタントです。

Blueskyは2024年の一般公開以降、約3,000万人のユーザーを獲得し、X(旧Twitter)からの移行先として注目を集めてきました。しかし、カスタムフィードの作成にはこれまでプログラミング知識が必要であり、技術者以外のユーザーにとっては高いハードルがありました。Attieはこの課題を正面から解決するアプリであり、AnthropicのClaude AIの自然言語理解能力を活用して、「猫の写真だけのフィード」「テック系ニュースのみ」「日本語の投稿だけ」といった要望を一言伝えるだけで、AT Protocol上にカスタムフィードを構築してくれます。

Attieとは何か

Bluesky版AIアシスタントの全貌

Attieは、Blueskyのオープンプロトコル「AT Protocol(atproto)」上に構築されたスタンドアロンのAIアシスタントアプリです。名前の由来はAT Protocolの「AT」から取られています。Blueskyの公式チームが開発し、バックエンドのAI処理にAnthropicのClaudeを採用しています。

Attieの最大の特徴は、自然言語によるカスタムフィード生成です。従来、Blueskyのカスタムフィードを作成するには、Feed Generatorと呼ばれるサーバーサイドのプログラムを自前でホスティングする必要がありました。これには以下のような技術的ハードルがありました。

  • AT ProtocolのFeed Generator APIの理解
  • フィルタリングロジックのコーディング(TypeScript/Python等)
  • サーバーのホスティングと運用
  • Blueskyへのフィードの登録

Attieはこれらすべてのステップを自動化します。ユーザーは「AIに関するニュース投稿だけを集めて」「フォロワー1,000人以上のアカウントの投稿に絞って」といった自然言語の指示を入力するだけで、Attieが内部でClaude AIを使って意図を解釈し、適切なフィルタリングルールを生成、AT Protocol上にフィードを自動構築します。

AT Protocolとカスタムフィード生成の仕組み

AT Protocol(Authenticated Transfer Protocol)は、Blueskyの基盤となる分散型ソーシャルネットワーキングプロトコルです。従来のSNSとは異なり、アルゴリズムによるフィード選択がプロトコルレベルでオープンに設計されています。

この図は、Attieがユーザーの自然言語入力からカスタムフィードを生成するまでのアーキテクチャの全体像を示しています。

Attieのアーキテクチャ — ユーザーの自然言語入力がClaude AIで解釈され、AT Protocol上にカスタムフィードが自動生成される仕組み

具体的な処理フローは以下の通りです。

  1. ユーザーが自然言語で指示を入力: 「写真が多い投稿だけ見たい」「英語のテック系ニュースを集めて」など
  2. Claude AIが意図を解釈: AnthropicのClaudeが自然言語を解析し、フィルタリング条件(言語、キーワード、メディア種別、エンゲージメント閾値など)を構造化データに変換
  3. Feed Generatorルールを自動生成: 構造化されたフィルタリング条件をAT ProtocolのFeed Generator仕様に準拠したルールセットに変換
  4. AT Protocol上にフィードを登録: 生成されたFeed GeneratorがBlueskyのネットワークに登録され、他のユーザーからも購読可能に
  5. リアルタイムでフィードが更新: Blueskyの投稿ストリームから条件に合致する投稿を自動的にフィルタリングし、フィードに表示

重要なのは、生成されたフィードがユーザー個人のものに閉じない点です。AT Protocolの設計上、作成されたカスタムフィードは公開フィードとして他のBlueskyユーザーも購読できます。つまり、Attieで作成した「日本のスタートアップニュース」フィードを、世界中のBlueskyユーザーが利用できるのです。

「バイブコーディング」とは——ソーシャルアプリを自然言語で作る

Atmosphereカンファレンスでの発表

Blueskyは2026年3月28日に開催されたAtmosphereカンファレンスで、Attieの発表と同時に**「バイブコーディング(Vibe Coding)」**という概念を提唱しました。これは、ソフトウェア開発における「バイブコーディング」の概念をソーシャルアプリの世界に持ち込んだものです。

従来の「バイブコーディング」は、AIに自然言語で指示を与えてコードを生成させるプログラミング手法を指していました。Blueskyはこれをさらに拡張し、ソーシャルアプリそのものを自然言語で構築するというビジョンを掲げています。

具体的には、Attieを通じて以下のようなことが可能になります。

  • カスタムフィードの作成: 「猫の写真だけのフィード」を自然言語で作成
  • アルゴリズムのカスタマイズ: 「最新の投稿を優先」「いいね数が多い順に表示」などの並び替えルールを言葉で指定
  • 自動モデレーション: 「政治的な投稿をフィルタリング」「スパムを除外」などのモデレーションルールを設定
  • インタラクションの自動化: 特定の条件に基づいた自動応答やリポストの設定

AT Protocol上の「エージェント」としてのAttie

Attieが特筆すべきは、単なるフィード生成ツールではなく、AT Protocol上で動作するAIエージェントとして設計されている点です。Attieは以下のようなエージェント的機能を備えています。

  • 継続的な学習: ユーザーのフィード閲覧パターンを学習し、フィルタリングルールを自動調整
  • プロアクティブな提案: 「このトピックに関するフィードも作りますか?」といった提案
  • マルチフィード管理: 複数のカスタムフィードを同時に管理し、重複を排除
  • 自然言語での修正: 「もう少し技術的な投稿を増やして」といった追加指示でフィードを微調整

主要SNSのAI機能比較

Attieの登場により、主要SNSのAI活用状況に大きな差が生まれています。以下の表で各プラットフォームのAI機能を比較します。

機能X(Twitter)Bluesky + AttieMastodon
AIチャットボットGrok(xAI製)搭載Attie(Claude搭載)なし
カスタムフィードAI生成なし自然言語で自動生成なし
アルゴリズム透明性非公開(一部OSS化)完全オープン(AT Protocol)アルゴリズムなし(時系列のみ)
フィード選択権プラットフォーム主導ユーザー主導ユーザー主導(手動)
AIモデレーション自動フィルタリングユーザー定義可能インスタンス管理者依存
プロトコル独自(非公開)AT Protocol(オープン)ActivityPub(オープン)
AI画像生成Grok経由で対応現時点では非対応なし
月額料金Premium: $8〜(約1,200円〜)無料(Attieも無料)無料(インスタンス依存)
データポータビリティ制限あり完全対応(アカウント移行可)対応(ActivityPub経由)

この比較から明らかなように、BlueskyとAttieの組み合わせは**「AI × オープンプロトコル × ユーザー主権」**という独自のポジションを確立しています。X(Twitter)のGrokがプラットフォーム内に閉じたAI体験を提供するのに対し、AttieはAT Protocolのオープン性を活かして、ユーザーがAIの力を自分のソーシャル体験のカスタマイズに直接活用できる設計になっています。

分散型SNSとAIの相性

なぜ分散型プロトコルにAIが必要なのか

分散型SNSは、中央集権型のプラットフォームと比べて「アルゴリズムによるキュレーション」が弱いという構造的な課題を抱えてきました。Mastodonでは基本的に時系列順でしか投稿が表示されず、情報過多の時代にユーザーが自分にとって有意義な投稿を発見するのが困難でした。

この図は、中央集権型SNSと分散型SNS+AIの情報フィルタリングの違いを示しています。

中央集権型SNS vs 分散型SNS+AI — アルゴリズムの透明性と情報フィルタリングの仕組みの比較

AT Protocolは、この課題に対して「アルゴリズムの選択権をユーザーに渡す」という設計思想で答えました。Feed Generatorという仕組みにより、誰でもフィードのアルゴリズムを作成・公開できます。しかし、技術的なハードルの高さから、実際にカスタムフィードを作成できるのは開発者に限られていました。

Attieの登場は、この**「設計思想」と「実際の利用体験」のギャップ**を埋めるものです。AIが翻訳レイヤーとして機能することで、技術的な知識がなくても分散型プロトコルの恩恵を最大限に享受できるようになります。

オープンプロトコル × AI の技術的優位性

AT ProtocolのようなオープンプロトコルにAIを組み合わせることには、技術的に大きな優位性があります。

1. データアクセスの透明性

AT Protocolでは、すべての投稿データが公開リポジトリ(Personal Data Server)に保存されます。AIがフィード生成のためにデータを分析する際、どのデータにアクセスしているかが完全に透明です。中央集権型SNSでは、AIがどのデータをどう使っているかがブラックボックスになりがちですが、AT Protocolではその心配がありません。

2. アルゴリズムの検証可能性

Attieが生成したフィードのフィルタリングルールは、AT Protocolの仕様に基づいて公開されます。他の開発者がそのルールを検証し、改善提案を行うことも可能です。AIが生成したアルゴリズムが透明であるため、偏りやバイアスを外部からチェックできます。

3. エコシステムの拡張性

AT Protocolはオープンな仕様であるため、Attie以外の開発者やサービスも同じプロトコル上でAI機能を構築できます。これにより、単一企業に依存しないAIエコシステムが形成されます。

日本のSNS市場への影響

日本におけるBlueskyの現状

日本はBlueskyの海外市場の中で最も活発なコミュニティの一つです。2024年の一般公開以降、日本語ユーザーは急速に増加し、特にイラストレーター、漫画家、技術者を中心に活発なコミュニティが形成されています。X(旧Twitter)の方針変更(API有料化、アルゴリズム変更など)に不満を持つユーザーの受け皿として、Blueskyは日本でも存在感を高めてきました。

Attieが日本ユーザーにもたらす変化

Attieの自然言語フィード生成は、日本語にも対応予定です。これにより、以下のようなユースケースが日本市場で期待されます。

1. クリエイターのファンコミュニティ構築

「特定のジャンルのイラスト投稿だけを集めたフィード」「特定のハッシュタグと画像付き投稿のみのフィード」など、クリエイターが自分のファン向けにキュレーションされたフィードを簡単に作成できます。

2. 技術コミュニティの活性化

「日本語のプログラミング関連投稿のみ」「特定の技術スタック(React、Rust、Pythonなど)に関する投稿だけ」といったフィードを、技術者がコードを書くことなく作成できるようになります。

3. ニュースキュレーション

「日本のスタートアップニュースのみ」「AI関連の日本語投稿」など、ジャンル特化型のニュースフィードを誰でも作成・共有できます。

日本市場での課題

一方で、日本市場特有の課題も存在します。

  • 日本語の自然言語処理精度: Claudeの日本語理解は高水準ですが、日本語特有の表現やニュアンス(例: 絵文字やスラング)を正確にフィルタリングルールに変換できるかは検証が必要
  • 既存コミュニティの移行コスト: X(旧Twitter)に蓄積された10年以上のフォロー関係やコンテンツ資産の移行は容易ではない
  • インフラの日本リージョン対応: AT Protocolのリレーサーバーの日本リージョンでの可用性がレスポンス速度に影響する可能性

日本企業への示唆

Attieの登場は、日本のテック企業にとっても示唆に富んでいます。AT Protocolはオープンプロトコルであるため、日本企業が独自のAIアシスタントをAT Protocol上に構築することも技術的に可能です。たとえば、日本語に特化したフィード生成AIや、特定の業界(アニメ、ゲーム、テックなど)に最適化されたエージェントを開発する余地があります。

Attieの料金体系と今後のロードマップ

現時点での料金

Attieは現在無料で利用可能です。Blueskyアカウントを持っていれば、追加の課金なしでAttieの全機能を使用できます。AI処理のコスト(Claude APIの利用料)はBluesky側が負担しています。

ただし、今後のスケーリングに伴い、以下のような有料プランが導入される可能性があります。

項目無料プラン(現行)有料プラン(予想)
フィード作成数制限あり(詳細未発表)無制限
AI処理回数月間上限あり上限緩和・撤廃
高度なフィルタリング基本機能のみ複合条件・リアルタイム分析
フィード分析なし購読者数・エンゲージメント分析

今後のロードマップ

Atmosphereカンファレンスでは、Attieの今後の方向性として以下が示唆されました。

  • マルチモーダル対応: 画像や動画の内容をAIが解析し、ビジュアルコンテンツベースのフィルタリングを実現
  • エージェント間連携: 複数のAttieエージェントが協調して、より高度なフィード生成やコンテンツ推薦を行う
  • サードパーティAI対応: Claude以外のAIモデル(GPT、Geminiなど)との連携も視野に
  • 開発者向けAPI: Attieの機能をサードパーティアプリから利用できるAPIの公開

まとめ——分散型SNSとAIの融合が切り開く未来

BlueskyのAttieは、分散型SNSとAIの融合という新しいパラダイムを切り開くアプリです。自然言語でカスタムフィードを作成できるという機能は一見シンプルですが、その背景には「アルゴリズムの民主化」という深い設計思想があります。

中央集権型SNSでは、プラットフォーム側がアルゴリズムを制御し、ユーザーのタイムラインを決定しています。一方、BlueskyとAttieの組み合わせは、ユーザー自身がAIの力を借りてアルゴリズムを構築するという、根本的に異なるアプローチを提示しています。

今後のアクションとして、以下のステップを検討してみてはいかがでしょうか。

  1. Blueskyアカウントの作成: まだアカウントを持っていない場合は、bsky.appから無料で登録。Attieを利用するための前提条件
  2. Attieアプリの試用: 自分の興味・関心に合ったカスタムフィードを自然言語で作成してみる。「日本語のAI関連ニュース」「好きなクリエイターの作品まとめ」など、具体的なテーマで試すのがおすすめ
  3. Claude Proで高度なAI体験を深める: Attieの裏側で動いているClaude AIに興味を持ったら、Claude Proに登録してAIの可能性をさらに深く体験してみる。自然言語でのプログラミングやデータ分析など、Attieと同様のAI体験を幅広く活用できる
  4. AT Protocol開発者コミュニティへの参加: 技術者であれば、AT Protocol上での独自フィードジェネレーター開発にチャレンジ。Attieのソースコードやドキュメントも公開予定のため、オープンソースコミュニティへの貢献も可能

分散型SNSとAIの融合は、ソーシャルメディアの次の10年を定義する可能性を持つ大きなトレンドです。Blueskyの「Attie」は、その最前線に立つプロダクトとして注目に値します。

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