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1Passwordが33%値上げ——代替5社を徹底比較

人気パスワードマネージャー1Passwordが、2026年3月27日から大幅な値上げを実施する。個人プランは年額**$35.88から$47.88へ、実に33%の値上げだ。ファミリープランも$59.88から$71.88へと20%引き上げられる。日本円に換算すると(1ドル=150円想定)、個人プランは年間約5,380円から約7,180円**に跳ね上がることになる。円安が続く中、日本のユーザーにとっては実質的な負担感はさらに大きい。

この記事では、値上げの背景にある新機能を解説したうえで、乗り換え候補となるパスワードマネージャー5社を料金・機能・セキュリティの観点から比較する。

値上げの詳細と新料金体系

1Passwordの新旧料金を整理すると以下のとおりだ。

プラン旧料金(月額)旧料金(年額)新料金(月額)新料金(年額)値上げ率
個人$2.99$35.88$3.99$47.88+33%
ファミリー(5名)$4.99$59.88$5.99$71.88+20%

日本円(1ドル=150円)では、個人プランが月額約600円→約600円(年額ベースでは約5,380円→約7,180円)、ファミリープランが年額約8,980円→約10,780円となる。特にファミリープランは5名で割ると1人あたり月額約180円と依然としてコスパが良いものの、個人プランの33%値上げは大きなインパクトだ。

なお、既存ユーザーも猶予なく新料金が適用される。次の更新日から自動的に新価格へ移行するため、3月27日より前に年間プランを更新すれば、旧価格でもう1年利用できる

値上げの根拠 ─ 1Passwordの新機能

1Passwordは値上げの理由として、2025年後半から2026年にかけて追加した3つの主要機能を挙げている。

以下の図は、1Passwordが値上げの根拠とする3つの新機能の概要を示しています。

1Passwordの新機能フロー。AIパワード命名機能、Watchtower強化、プロアクティブフィッシング防止の3つの機能が値上げの根拠

これら3つの機能は、いずれもセキュリティの底上げに貢献するものではある。しかし、ユーザーの多くは「パスワードの安全な保存と自動入力」が主な利用目的であり、33%の値上げに見合う価値があるかは議論が分かれるところだ。

AIパワード命名機能

ログイン情報を保存する際に、AIがサービス名やアカウント種別を自動識別し、最適な項目名を付与する。例えば「login - amazon.co.jp」のような無機質な名前が「Amazon.co.jp(個人アカウント)」のように整理される。Vaultに数百のログイン情報を持つヘビーユーザーには便利だが、手動で名前を付けている人にはメリットが薄い。

Watchtower強化

既存のセキュリティ監視機能「Watchtower」が大幅に強化された。漏洩データベースとのリアルタイム照合に加え、脆弱なパスワードや再利用パスワードをスコアリングし、優先度付きで修正を提案する。Have I Been Pwnedとの連携もより深まり、漏洩が検知された場合のワンクリック変更フローも改善された。

プロアクティブフィッシング防止

URL類似度分析を使ったフィッシングサイトの自動検出機能だ。例えば「amaz0n.co.jp」のような偽サイトにアクセスした際、自動入力をブロックし警告を表示する。ブラウザ拡張機能に組み込まれており、追加の設定は不要。特にフィッシングが巧妙化している現在、実用性は高い。

パスワードマネージャーの暗号化方式を理解する

代替サービスを比較する前に、パスワードマネージャーのセキュリティの核心である暗号化方式について解説する。

ゼロナレッジアーキテクチャ

信頼できるパスワードマネージャーは、すべて「ゼロナレッジ」設計を採用している。これはサービス提供者自身がユーザーのマスターパスワードや保存データを一切閲覧できない仕組みだ。暗号化・復号はすべてユーザーのデバイス上で行われ、サーバーには暗号化済みのデータのみが保存される。

暗号化アルゴリズム

主要なパスワードマネージャーが採用するアルゴリズムは以下のとおりだ。

  • AES-256-GCM: 1Password、Bitwarden、NordPassが採用。米国政府が機密情報の暗号化にも使用する業界標準で、現時点で解読は計算上不可能とされている
  • XChaCha20: NordPassが追加的に採用。AES-256と同等のセキュリティ強度を持ちつつ、ソフトウェア実装でのパフォーマンスに優れる
  • AES-256 + Argon2: Proton Passが採用。鍵導出関数にArgon2を使用することで、ブルートフォース攻撃への耐性を強化している

シークレットキー(1Password独自)

1Passwordの特徴的なセキュリティ要素が「Secret Key」だ。マスターパスワードに加えて、アカウント作成時に生成される128ビットのシークレットキーが暗号化に使用される。これにより、万が一マスターパスワードが漏洩しても、シークレットキーなしではデータを復号できない。ただし、このシークレットキーの管理(バックアップ)がユーザーの責任となる点は留意が必要だ。

パスワードマネージャー5社比較

以下の図は、主要5社の年間料金を視覚的に比較したものです。

パスワードマネージャー5社の年額料金比較棒グラフ。1Password(値上げ後$47.88)が最も高く、Apple Passwordsが無料で最安

1Passwordの値上げ後料金が、競合と比較して突出していることが一目でわかる。

機能・料金比較表

項目1PasswordBitwardenNordPassProton PassApple Passwords
年額(個人)$47.88(約7,180円)$10.00(約1,500円)$21.48(約3,220円)$23.88(約3,580円)無料
無料プランなし(14日試用)あり(十分実用的)あり(1デバイス制限)あり(制限あり)あり
ファミリープラン$71.88/年(5名)$40.00/年(6名)$42.48/年(6名)$47.88/年(6名)無料(家族共有)
暗号化AES-256-GCMAES-256-GCMXChaCha20AES-256 + Argon2AES-256
シークレットキーありなしなしなしなし
Windows△(iCloud経由)
macOS
iOS / Android○ / ○○ / ○○ / ○○ / ○○ /
Linux×
ブラウザ拡張全主要ブラウザ全主要ブラウザ全主要ブラウザ全主要ブラウザSafari中心
オープンソース×○(完全)×○(クライアント)×
パスキー対応
漏洩監視WatchtowerReportsData Breach ScannerDark Web Monitor×
オフラインアクセス

各サービスの特徴

Bitwarden ─ コスパ最強の選択肢。完全オープンソースで、無料プランでも無制限のパスワード保存・デバイス同期が可能。年額$10のPremiumではTOTP認証コード生成や緊急アクセスが追加される。UIは1Passwordほど洗練されていないが、機能面で劣る部分はほぼない。セルフホスティングにも対応しており、技術者には特に人気が高い。

NordPassNordVPNを提供するNord Security製。単体でも十分な機能だが、真価を発揮するのは**NordVPN + NordPass + NordLockerのバンドルプラン($5.99/月、年額$71.88)**だ。VPNとパスワードマネージャーとクラウドストレージをまとめて契約できるため、NordVPNユーザーには特にお得。XChaCha20暗号化を採用し、ゼロナレッジアーキテクチャもDeloitteによる監査済みだ。

Proton Pass ─ プライバシー重視のProton(ProtonMail)が提供。エンドツーエンド暗号化にArgon2鍵導出関数を組み合わせた堅牢なセキュリティが特徴。メールエイリアス(hide-my-email)機能が無料プランでも使えるのがユニーク。Proton Mail、Proton VPN、Proton Driveとの統合が進んでおり、Protonエコシステムのユーザーには自然な選択肢だ。

Apple Passwords ─ iOS 18 / macOS Sequoiaから独立アプリとなったApple標準のパスワード管理。完全無料でiCloudキーチェーンと統合されており、Apple製品ユーザーには最も手軽。ただし、Windows対応はiCloud for Windows経由に限定され、Androidアプリはない。Linux非対応。パスワード共有やVault分類などの高度な管理機能も不足しており、本格的なパスワードマネージャーとしては機能不足感がある。

日本ユーザーへの影響と考察

円安による実質負担増

1Passwordの新価格$47.88は、1ドル=150円で約7,180円だが、2025年末から2026年にかけて円相場は1ドル=148〜155円のレンジで推移している。仮に155円まで進めば年額約7,420円となり、2年前(1ドル=130円台)の旧価格と比較すると実質50%以上の値上げと感じるユーザーも少なくないだろう。

日本語対応の重要性

パスワードマネージャーの乗り換えを検討する際、日本語UIの充実度は重要な判断基準だ。1Passwordは日本語対応が最も成熟しており、サポートも日本語で受けられる。Bitwardenは日本語UIに対応しているがコミュニティ翻訳ベースで、サポートは英語のみ。NordPassも日本語UI対応済みだが、一部翻訳が不自然な箇所がある。Apple Passwordsは当然ながらAppleの高品質な日本語対応だ。

確定申告での経費計上

フリーランスや個人事業主にとっては、パスワードマネージャーの利用料は「通信費」や「消耗品費」として経費計上できる。年額7,180円は小さな金額ではないため、事業利用している場合は忘れずに計上したい。Bitwardenの年額1,500円ならさらに負担を減らせる。

それでも1Passwordを使い続ける価値がある人

値上げ後も1Passwordに留まる合理的な理由がある人は、以下の条件に当てはまるケースだ。

  1. シークレットキーによる二重保護を重視する(マスターパスワードの漏洩リスクを最小化したい)
  2. Watchtowerのプロアクティブ監視を日常的に活用している
  3. 企業・チームアカウントと個人アカウントを1Passwordで統一運用している
  4. Travel Mode(国境通過時にVaultを一時的に非表示にする機能)を使う
  5. 数百〜数千のログイン情報があり、移行コストが値上げ分を上回る

逆に、50件以下のログイン情報しか管理しておらず、基本的な自動入力ができれば十分というユーザーは、Bitwardenの無料プランやApple Passwordsへの移行を検討する価値がある。

まとめ ─ 3月27日までにやるべきこと

1Passwordの33%値上げは、長年のユーザーにとって見過ごせない変更だ。以下のアクションステップで対応しよう。

  1. 3月27日以前に更新日を確認する ─ 1Passwordアプリの「アカウント」→「請求情報」から次回更新日をチェック。更新日が近ければ、旧価格で前倒し更新を検討する
  2. 自分の利用パターンを棚卸しする ─ 保存しているログイン情報の件数、使用デバイスの種類(Windows/Mac/Linux/iOS/Android)、家族での共有ニーズを整理する
  3. 代替サービスを試用する ─ Bitwardenは無料、NordPassとProton Passは無料プランあり。まずは1週間ほど並行利用して使い勝手を確認する
  4. 移行する場合はエクスポート→インポート ─ 1Passwordからは1PUXまたはCSV形式でエクスポートできる。移行先でインポートした後、2要素認証の設定も忘れずに再確認する
  5. VPNも検討中ならNordVPNバンドルを比較する ─ NordVPN + NordPass + NordLockerで月額$5.99のバンドルは、VPNとパスワードマネージャーを個別に契約するより大幅にお得だ

パスワードマネージャーはデジタルライフのセキュリティの要であり、「安いから」だけで選ぶべきではない。しかし、同等のセキュリティを低コストで実現できる選択肢が存在する以上、この値上げを機に自分に最適なサービスを再検討するのは賢明な判断だ。

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